さて、今月は以前から触れようと思っていた自律神経についてです。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、よく交感神経がアクセル、副交感神経がブレーキに例えられます。
一言で言うと、自律神経系は、「内臓機能を調整するシステム」です。
交感神経、副交感神経は、普段意識しなくともオートマチックに働いてくれますが、バランスが崩れてしまうと、様々な症状が現われます。
例えば、
倦怠感、頭痛、慢性の肩こり・腰痛、手足の冷
え、便秘、下痢、めまい、耳鳴り、不眠、口の渇
き、不安感、パニック、鬱症状
などなど...
特定の病名が付かない不定愁訴と呼ばれている症状は、ほとんど当てはまると言っても過言ではありません。
原因は、一般的にストレス、生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの乱れ等とされていますが、この原因を取り除くのは、なかなか難しいのではないでしょうか。
では、自律神経のバランスを整える方法はあるのか?
あります。
最も簡単なのは、「呼吸法」です。
呼吸は、通常、自分で意識しなくとも勝手に自律神経がコントロールしてくれていますが、自分の意識でもコントロールが可能です。
ゆったりとした長い呼吸は、副交感神経が優位になることが分かっています。
なので、腹式の呼吸が推奨されています。
しかし、当会では、胸式呼吸と腹式呼吸の両方の実践を推奨しています。
なぜならば、肺に空気を取り込む呼吸運動は、主に「肋間筋」と「横隔膜」という呼吸に関連する筋を上手く使えなければならず、胸式呼吸を促す肋間筋が弱っていると横隔膜もうまく使うことができないからです。
呼吸には、意識しないで行う呼吸、意識して行う呼吸の他にも脳の偏桃体が関与する「情動呼吸」というものがあり、感情によって呼吸数が変わってきます。
例えば、不安や恐怖を感じた時、呼吸は早くなり、リラックスしている時は、遅くなります。
逆を言えば、呼吸をコントロールすることで、交感神経の高まりを沈めたり、副交感神経の働きを高めたりすることができ、結果的に感情のコントロールに繋がります。
感情の変化は、当然、身体にも影響を及ぼし、不定愁訴の解消へと繋がります。
そして、気功法は呼吸に加え、さらに気の流れを良くすることで血流を改善します。
気功法で行う瞑想法では、脳血流、脳脊髄液の流れを正常にして脳内の老廃物の排出、ホルモン分泌、神経伝達の正常化等に繋がります。
脳幹から出ている副交感神経である迷走神経の働きもよくなり、結果的に交感神経とのバランスを整えます。
このように、先人が作り上げてきたシステムは、人間本来の機能を正常化する知恵が詰まっています。
しかしながら、これらはきちんと学ばなければ、正しく実践することができません。
なので、今回は、自宅でも簡単にできる自立神経の調整法をお伝えします。
本でも、よく紹介されている「指もみ健康法」です。
東洋医学では、人間の身体に経絡と呼ばれる気の通り道があるとされています。
ツボは、経絡上にあるものが殆どですが、指もみ健康法では、「井穴」(せいけつ)と呼ばれるツボを刺激します。
このツボは、「脈気が出るところ」で膨満感や緊張を取るツボとされています。鍼治療では、井穴刺絡と言って、井穴に鍼を刺し少量の出血をさせる手技があります。
西洋医学的にも色々と研究がなされていて、指もみの刺激が脳に信号を送り、自立神経系に影響を与えることが分かっています。
鍼で刺さなくても刺激を与えると効果が得られます。
ツボの場所は、図を参照して頂くとよいですが、実践される場合は、爪の生え際の両際を親指と人差し指で摘まんで、10回程度押圧するようにして下さい。
または、爪楊枝等で刺激しても良いですが、皮膚を傷つける等刺激が強すぎないように注意して下さい。
足の指も同様に行います。